元々は4枚2対の翼をもつエルジェ族で、鮮やかな青い瞳と美しい金髪の持ち主。
純白のその翼は彼の自慢であり、またエルジェ族であることに誇りを持っていた。
かつてはフラシェリンとディーフヴァレスの警備をする自警団に所属しており、
彼は剣の技量の高さから、たびたび魔物の討伐を任され地上大陸の討伐隊へ参加していた。
ときに討伐隊のリーダーを任されることもあった(魔物と幻獣の違いは理解していた)。
約10年前、8人組の討伐隊のリーダーを務めていたとある魔獣の討伐の際、
仲間二人が魔獣の角と牙によって貫かれ命を落とし、
また自身も4枚すべての翼を根元から切り落とされるという重症を負う。
これ以上戦うのは無意味と判断した彼は、
魔獣を討伐こそできなかったものの何とか追い払い、
残った仲間とともに命からがら逃げかえり、一命はとりとめた。
しかし、ほかの仲間もみな重傷を負い犠牲者も出てしまったこと、
また自身の自慢であり足ともいえる4枚の翼を一度に失った悲しみから、
彼は生きる希望を失ってしまった。
髪は象牙色に、瞳は青灰色に変わり、
右目の下にあるエルジェ族特有の文様も消えてしまった。
彼がエルジェ族であることを捨てると決めてから急に起きたことだった。
今はウォルティーネで車椅子の生活を送っている。
ライエンは彼と初めて会ったとき、
エルジェ族の特徴が見られないにもかかわらずエルジェ族の気配を感じたため、
彼に違和感を覚えた。
町医者とカリオンと共に歩行訓練を行ってはいるものの、
本人には全くと言っていいほどその気はなく、訓練の効果はほとんど出ていない。
生まれつき飛ぶことができないカリオンを有翼人種の恥と毛嫌いしていたが、
カリオンと接するうちにその意識を改めはじめている。
10年が経ち、かつて彼らが倒すことのできなかった魔獣が再び活動を再開し、
その魔獣の討伐を依頼されたレナードが仲間と共に彼の元を訪れる。
レナードは命を落とした仲間の遺した子供であり、
その子供がかつて自分たちが倒せなかった魔獣に挑もうとしていることを知り、
彼らを魔獣の元へ行かせたくないという思いから、彼らに対しかなりきつくあたった。
しかし、どれほど厳しく言ってもレナードの決意は変わらず、
レナードの強い思いと覚悟を感じた彼は、知りうるすべてのことをレナードに教え、
必ず生きて帰ってくることを約束させたうえで魔獣の元へ送り出す。
その後、レナードたちが魔獣を討伐し、約束通り彼の元へ戻ってくると、
彼は涙をこぼして生還を喜んだ。
そして、レナードたちの力強い姿を見た彼は、
生きるということについて考えるようになり、真剣に向き合うようになった。