封印術と解放術

魔法とはまた違う特殊な力。
この力を扱う者を封印術師と呼び、その血を引くものだけが扱うことができる。
封印術と解放術は表裏一体で、必ず両方同時に使用する。
たとえば、封印術で眠りについた者は解放術でいつか目を覚まし、
解放術で力を解き放つ際は封印術によって解き放つ力の強さを調整する。
魔法陣によって力を増幅し効果を高める場合も多く、
封印術師は魔法陣に関しても知識を深める必要がある。

かつては初代封印術師の子孫からそれぞれ分かれた複数の血筋があったが、
時代の流れによってだんだんとその数を減らしてしまい、
現在はシルリースの村に住むレムナードルテとその祖母しか確認されておらず、
封印術師の血が途絶えかねない危機的な状態に瀕している。

この力は誰かに教わるものではなく、時が来ると自然に新しい力に目覚める。
力の目覚めは、体の成長や本人の技術の向上に合わせ、その人にとって最適な時期に起こる。
早ければ5~6歳頃には最初の力に目覚め、
その後素直に受け入れ続ければ成人を迎えるころには一通りの力を得る。
その後は本人の工夫や応用によって使い方は大きく広がる。
鍛錬によってそれぞれ強さや効果時間などを調整したり、
術をかけてから効果が出るまでの時間をずらすなどのことができる。

力に目覚めるタイミングは完全に個人によるが、目覚める際に本人にはその前兆が分かる。
力の目覚めの際、力に体が適応しようとして、気分の悪さや高熱などの症状が出ることがある。
逆に、場合によっては体調の不良が全く出ずに適応することもある。
力に目覚めた際、術者はどんな力を得たかを直感的に理解することが出来る。
本人が素直に力を受け入れれば、一時的に体調不良になる以外は特に何も問題は起こらないが、
拒絶した場合は心と体の不一致からひどい苦痛を伴い、
さらに受け入れられなかった力が溢れだして、周囲に何らかの影響を与えてしまう。
与える影響は本人の拒絶の度合いや種類によって異なる。
たとえ拒絶したとしても、最終的にはすべての力を習得することになる。

封印術と解放術には術者の心や性格が大きく影響してくるため、
やさしさと思いやりにあふれる人物に育つよう、大切に育てられる。
術者は普段の生活の中でも無意識のうちに微弱な力を使用していることが多い。

また、術者が強いストレスを感じているときや、自身の力を過信しすぎている場合、
体が危険と判断して力を抑え込み、一時的に封印術と解放術が使えなくなることがある。
どちらの場合も原因を取り除けば再び使えるようになる。

力の習得の最終段階になったときも、封印術と解放術が一切使えなくなる時期がある。
それまでは力を与えられ使うことを主としてきたが、
この段階だけは力は完全に体の内側に抑え込まれ、「力を使わない力」を習得する。
この時術者は力に目覚める感覚はあるが、どんな力を得たかまでは分からず戸惑うことも多い。

初めて力に目覚めてからこの段階になるまで、
術者は微弱な力を気づかないまま発し続けている、いわば「垂れ流し」の状態になっており、
その状態で他人と接することが当たり前となっている。
そのため、その力の影響を周囲の人たちにも与え続けており、
術者と親交が深い相手などは変化を感覚的に感じ取り、違和感を術者に訴えることもある。
また、上述の通り術者はちょっとしたことにも無意識のうちに力を使っていることが多く、
術を使える時以上に「封印術」と「解放術」というものを強く意識することになる。
この「術が使えない」という状態で生活することにより、
「力を使う状態」と「使わない状態」をはっきり認識し、区別することが出来るようになると、
次の力の目覚めが起こり、再び封印術と解放術が使用可能になる。

封印術と解放術の基本は「結ぶ」と「解く」の二つの動作。
この二つの動作からすべての術は形作られている。
本来は長期間の封印とその解除に使われる術であり、
気楽に使うようなものではないという印象を受けがちだが、
絡まった糸をほどいたり、痛みを抑えたり、くしゃみを止めたりなど、
日常では生活をちょっと楽にするために使われる場合が多い。
また戦闘で活用されることも多く、
封印術は相手の動きや能力の一部またはすべてを封じるものが主で、
解放術は逆に力を引き出し高めるために使うことが多い。

本来封印術は、対象の意識を深い眠りにつかせたり力を鎮めて抑え、
とても長い時の間、周囲との関わりを断ち安息を与えるためのもので、
また解放術はその対象を力や意識の乱れなく目覚めさせるためのものである。
そのため、封印術と解放術ともに、対象者にとっては本来とても心地の良いものである。
対象者の同意がなくても術はかけることができるが、同意があればより長い間効果が持続する。
封印術師がかけた封印は基本的に本人かその血筋の者にしか解けないが、
封印術と解放術は必ず同時に使用するという性質上、永遠に封じるということはできず、
時の流れによって封印は解放術によって少しずつ弱まっていく。

術は基本的には対象者に直接作用するものだが、「結界」だけはやや特殊で空間に作用する。
結界の中にいる者の能力を封じる、または高める、外からの攻撃を防ぐなどのことができる。
普通はドーム状だが、使い方によっては一部分に壁として発生させたり、
術者の移動に合わせて結界を移動させることもできる。

また、術者が意識的に力を使うとき、その瞳は独特の輝きを放つ。
その度合いは感情の昂りや力の大きさによって変わる。
平常時の瞳とは明らかに変わるために力を使っていることが周りに知られてしまうが、
技術が高ければ封印術によって輝きを抑え隠すことが出来る。
しかしながら、瞳の輝きを抑えることは自身の力や感情を抑えることにもつながってしまうため、
よほどのことでもない限りは隠すことはない。