液化魔力のカップ

とある地域の宿を経営する若女将が開発したティーカップ。
魔力をエネルギー源とする精霊や妖精などを対象に作られた。

カップの側面に小さなくぼみがいくつか付いており、そこに専用の魔石をはめ込んで使う。
魔石はその時に必要な魔力の種類によって選ぶことができ、
はめ込んでしばらくすると魔石の魔力がカップの中に液化する。
液化した魔力は紅茶のようにさらっとした液体になる。
魔石の種類や数によって濃度の割合や魔力の量を調整する。
同じ種類の魔石を複数使用することも可能。
はめ込む魔石の組み合わせによって、液化した魔力は様々な色に変化する。
精霊たちは液化した魔力を飲むように摂取する。

カップが空になったあとは、液化した魔力が再び溜まるまでしばらく時間がかかる。
使用をやめる場合は魔石をすべて取り外せばよい。
複数の魔石からなる強い魔力が濃縮されて液化しているので、
人間が顔を近づけるのはかなり厳しい。
濃縮されているせいで見た目の量はそれほど多くはないが、
魔力の量自体はかなり多いため、何回にも分けて少しずつ摂取することになる。
現在は宿周辺の村や町の店で大きさやデザインなど種類豊富に取りそろえられている。
精霊の姿は必ずしも人と同じとは限らないため、カップの形以外にも様々な形状の器がある。
どのカップも魔石は兼用できるようになっている。
複数の魔石の魔力に何度も耐えられるように作られているため、カップ自体の耐久力も高く、
少しぶつけたり落としたりした程度では割れることはない。

若女将の経営する宿には、土地柄、精霊や妖精が人間と一緒に来客することが多い。
物を食べることができず人間と同じ食事を出来ない精霊たちが、
人間達の食事をしつつの談笑の輪に入りづらく気まずそうにしていることが非常に多く、
それをずっと見てきた若女将が何とか出来ないものかと考えたことが開発のきっかけ。
宿で食事を提供する際、精霊や妖精の客には専用メニューとしてこのカップを勧めている。
この宿でカップの存在を知る者も多く、
見た目だけでも一緒に食事ができるということで、精霊や妖精たちにはかなり好評なようだ。
若女将はカップと魔石を近くの町で購入できることを伝えている。

宿の近くに魔力の液化現象を見ることのできる洞窟があり、
若女将はそこからティーカップのヒントを得た。
洞窟の岩石に魔力を液化させる性質があることが分かり、
その岩石を粉末にした後土に練り込んで成形、焼成することでカップに仕上げた。
使う土の種類や混ぜる岩石の量を変えて何度も試し、適切な土と割合を見つけ出した。
初めは魔力の種類ごとにカップを分けていたが、
必要な魔力は精霊の種類やその時その時で違うため、
種類ごとに分けてしまうと必要な魔力を十分にとれないということで、
今の魔石をはめ込むタイプに改良された。

カップにはめ込むことのできる魔石はかなり種類が多く、
カップも魔石もまだまだ特殊なものであるため少々値が張る。
カップと魔石すべてを一式買うと相当な値段になるので、
若女将や店員は、まずはカップ一つと必要最低限の魔石だけを買い、
その後必要に応じて魔石を買い足す方法を勧めている。

現在若女将は仕事の合間を縫って皿の上に魔力のケーキを乗せる研究をしており、
完成を楽しみにしている精霊や妖精は多い。